♡輪唱SAKURA♡ 導かれし刻13 忍者ブログ
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『流転刻』
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金魚
『輪唱 SAKURA』
 程よい艶と妄想を!           エロくたって    いいじゃない!    人間だもの
HN:
紅緋
HP:
性別:
非公開
職業:
実質自宅警備員
趣味:
妄想
自己紹介:
《せつない桜》の別館として。
発起日 2010年    12月20日
明日もがんばろう
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       独り立ち








   数日前より勝浦宿の一角への建築が始まっていた
   あと半日もすれば立派な住居付き茶屋が
   完成するだろう
   熊野水軍と呼ばれる男達がせっせと造り上げている

   「いよいよだな」
   「…うん」

   木槌の音と男達の叫ぶ声は
   鷹揚な心を囃し立てるように急かし焦らせた
   嬉しそうな堪増の横顔を盗み見れば
   今更中止ともいかないだろう
   トントン拍子に進められた茶屋計画実行
   自活しなければと呟いた言の葉を拾われ、今に至る…
   
   複雑で不安な気持ちを見透かすように
   堪増の腕が背中を軽く小突く 

   「もうひきかえせないけど がんばりなよ?」
    水軍の野郎達は毎日通い詰めると
    言っているしね

   「…三日も経たずに廃業かもよ?」
   
   それは困るねぇと豪快に笑う横で苦笑いをつくる
      
   この発端は数日前に遡る
   いつものように堪増と雑談時に
   欲しい物はあるかと尋ねられ住居と答えた
   だがその前に働き口を探さないと家も建たぬと
   笑っていたのだが…

   『有言実行』

   茶屋を営めるし住まいにもなる
   私の『欲しいもの』が目の前にある
   堪増はいとも簡単に一石二鳥をやってのけたのだ
   
   「…ありがとう」

   何処の馬の骨ともわからぬ女の戯れ言を
   真剣に受け止め大切に考えてくれた堪増に
   感謝してもしきれない

   「いい女は得だな くすっ

   いつの間にか流れ出た涙を
   堪増は指腹で拭ってくれた



   ****



   夕刻近くそれは完成した
   そのまま此処で寝ると告げると
   まだ何もないから屋敷に帰ろうと堪増は呆れたが
   頑として腰を上げぬ私に根負けし一人、帰っていった


   もうあの居心地の悪い屋敷には帰りたくない
 
   独り立ちといっても
   完全に堪増に負んぶにだっこ状態
   土台は用意してくれた
   後は自分で乗り切るしかない
  
   遙かなるこの時代で生きてゆくのだから
   
   


   数時間後、布団一式が届いた








   ~~~ 独り言 ~~~

   精神が壊れる前に


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